自由外出マスクに関する研究・開発
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藤井研究室では,現在,下記のような研究に取り組んでいます. [1] 自由外出マスク / Distancing-Free Mask [2] AI出力に対する規制 / Regulation
of AI output The Place of Artificial Intelligence in Human History [4] e自警ネットワーク / e-JIKEI Network [5] 浮上質量法 / The Levitation Mass Method (LMM)
自由外出マスクに関する研究計画 科研費・基盤B(R7年度〜R8年度) 電動ファン付き呼吸用保護具 (Powered Air-Purifying Respirator, PAPR) を ロックダウン代替手段として活用した社会技術システム 本研究の概要 本研究では,電動ファン付き呼吸用保護具(Powered Air-Purifying Respirator, PAPR)を,空気感染症に対する,ロックダウン代替手段・感染制御手段として活用した社会技術システムを提案することを目的とする.COVID-19 等の空気感染症が,いつまた再び,世界をロックダウンに導くかは不明である.「個人の自由を制限し,莫大な社会的損失をもたらすロックダウン」に対して,「より小さな負担の代替手段」を見つけておくことは重要である. 本研究では,空気感染症を有効に予防できる医療用PAPRを比較対象として,エアロゾル遮蔽性能はそのままに,PAPR基本モデルとして,低コスト・装着性・デザイン性を追求した[a]簡易型 と,制御器とセンサ(CO2濃度,差圧)を搭載し,様々な新機能導入・検証のベースとなる[b]標準型を開発する.一般市民用PAPRとしての利便性・選択肢を広げる. 次に,PAPR評価システムとして,@呼吸模擬システム,Aマネキンヘッド,Bエアロゾル遮蔽性能評価システムを開発する. さらに,「政府による感染制御の効率化」と「PAPRを装着しないの時・場所を選べる個人の自由」を両立させるため, PAPR装着率ネットワーク管理システムを試作・評価する. [1]PAPR本体,[2]PAPR評価装置,[3]PAPR装着率ネットワーク管理システムを組み合わせた社会技術システムを開発し,[4]社会実験により運用・改善し,「PAPRをロックダウン代替手段・感染制御手段として活用する社会技術システム」として提案することを目指す. 本研究課題の核心をなす学術的「問い」 本研究課題の核心をなす学術的「問い」は,以下である. 【問い】電動ファン付き呼吸用保護具(Powered Air-Purifying Respirator, PAPR)をロックダウン代替手段・感染制御手段として活用した社会技術システムは構築できるか? いつまた空気感染症パンデミック発生するか不透明な中,PAPR活用をロックダウン各要素(外出禁止,営業禁止,など)の代替選択肢として,市民一人一人に提供することは,市民生活を守り,個人の自由権・平等権・社会権の保護に繋がると期待できる. 我々は,これまで,PAPRをロックダウン代替手段として活用できる可能性を示してきた.例えば,激しい感染拡大状況(Rt =2)から,感染収束する目標値(Rt_target 0.9)に修正するためには,給気側エアロゾル遮蔽率100%のPAPRを一定割合の人が常時装着する場合,装着する人の割合 Wr_required は0.55で良いこと,すなわち,当該集団内で55%の人がPAPRを常時装着すれば良いこと,などを明らかにしてきた (図1). 下記の[参考文献-1]を含む,これまでの研究成果・知見に基づき,本研究を着想し,「問い」を立てるに至った. 本研究の目的および学術的独自性と創造性 本研究では,電動ファン付き呼吸用保護具(Powered Air-Purifying Respirator, PAPR)を,空気感染症に対する,ロックダウン代替手段・感染制御手段として活用した社会技術システムを提案することを目的とする.「PAPRを活用した,ロックダウン代替手段・感染制御手段」の実現可能性を追求する試みは,我々以外には,見当たらない.PAPR単体,維持法,評価法などの周辺技術の開発も,ロックダウン代替選択肢としての一般市民による使用を前提としたものは見当たらない.さらに,装着率管理システムによる「政府による感染制御の効率化」と「装着しない時・場所を選べる個人の自由」を両立させる試みも類例がない. 関連分野の研究動向と本研究の位置づけ COVID-19の感染経路の中で,接触感染・経口感染は,手洗い,食品衛生管理などにより,予防することが比較的に容易である.飛沫感染 (粒子径≧100μm) は,社会的距離の確保 (飛沫は2m程度で落下) ,マスク着用などで防止できる.現時点において予防が難しく,主要な感染経路となっているのは,(粒子径の小さな) エアロゾル (粒子径<100μm) が媒体となる空気感染であると考えられる.COVID-19のinfectious dose (感染に要するウイルス摂取数) は,300〜2,000
virions (個) 程度と推定される.PAPRに多用されるHEPAフィルタは,最も透過し易い粒子径(MPPS)である粒径 0.3μm のエアロゾルを 99.97% 以上ろ過できる. 装着者が呼吸により吸引・摂取するウイルス数を激減させるデバイスとして,医療用PAPRが実用化され,感染リスクの高い現場で活動する医療従事者用として活用されている. 呼吸用保護具 (PAPRなど) の遮蔽性能の指標として,米国・国立労働安全衛生研究所(NIOSH) が定義する指定防護係数 (APF:Assigned Protection Factor) がある.対象とするエアロゾルについて,APF= [外部濃度] / [内部濃度] と定義されている.医療用フェイスマスクの場合,装着訓練を受けた者が隙間なく装着した場合,APF=10 とされている.一方,医療用PAPR(表2[A],6ページ)は APF=1,000 と各段に優れた防護性能が認められている. 本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか [1]PAPR本体,[2]PAPR評価装置,[3]PAPR装着率ネットワーク管理システムの設計・試作・評価を行う.それらを組み合わせた社会技術システムを開発し,[4]社会実験により,その姿を現示し,「ロックダウン不要の社会技術システム」としての検証・提案を行う (表1). [1] PAPR本体 後述の[4]社会実験で使用するPAPR本体,周辺装置の開発を行う. [1.1] 基本モデル (図2) 制御器無として基本機能に絞り,低コスト・装着性を追求した[a]簡易型を開発する.次に,制御器とセンサ(CO2濃度, 差圧)を搭載し,給・排気用ポンプの差動制御や,スマートフォンとの接続 (Bluetooth) ができ,様々な新機能導入・検証のベースとなる[b]標準型を開発する. [1.2] 基本性能の向上 基本性能として,2種類の機能向上を目指す.@流路最適化により,呼気を効率的にフード外に排気するフード形状・流れ場を探索する.呼気の効率的排出は,給気流量の低減,それに伴う,部品の小型・軽量化に直結し,デザイン多様化を助ける.また,A流体モデルQ(ΔP, Duty1,
Duty2) を開発し,差圧ΔP・ポンプ出力Duty1, Duty2から呼吸流量Qを推定し,逆圧力設定により呼吸を助ける.これら新機能を,[b]標準型 に順次,実装・検証する. [1.3] メンテナンス法・バリエーション PAPR各部品の交換ユニット化,家庭での洗浄・消毒法を開発する.バリエーション展開として,(オフィス, 乗り物, 飲食店などの) 机・椅子を包むブース型,標準空調ユニット互換型(部屋ごとのPAPR化),飲食対応型 (フード開閉,エアシャワー) などを開発する. [1.4] 情報端末化 頭部に固定された支持機構と高容量電池を搭載するPAPRは,情報端末化との親和性が高い. [a] スマートフォン機能・拡張現実スクリーン・非接触入力機能・会話音響機能の実装. [b]圧力 (咳) センサ,体温センサ,脳波センサに基づく,体調の計測・管理システムの実装. 上記により,PAPRを「手放せない便利な必需品」とする可能性を探索する. [2] PAPR評価指標,PAPR評価装置 被験者無しで,PAPR性能評価を可能とするPAPR評価システム (3種類) を開発する (図3). [2.1]呼吸模擬システム 同じ空気をシリンダから出し入れする単純モード(流量Q(t)のみ模擬)と,呼気空気模擬・調整空気容器を用いた肺機能モード(CO2濃度, O2濃度を調整・制御)を開発する. [2.2]マネキンヘッド 呼吸を模擬した空気の出し入れをする気道模擬機構を導入する.[2.1] 呼吸模擬システムとの接続機能,[2.3] エアロゾル遮蔽性能評価システムとの連携機能を付加する.PAPR特性評価試験に加えて,ポンプ制御アルゴリズム開発,流路可視化実験などを支援する. [2.3]エアロゾル遮蔽性能評価システム 「感染者のPAPR装着」効果(物理的・心理的) の評価を行う.通常の外部環境からの汚染 (エアロゾル侵入) に加え,内部から外部への汚染も評価対象とする.生体センサ(脈拍, 脳波など),環境センサ (音響など) を装備し,[2.2] マネキンヘッドと連携し,PAPR特性評価を行う. [3]PAPR装着率ネットワーク管理システム 各市民のPAPR装着率Wrの計測・記録,及び,Wrの電子証明発行を行えるPAPR装着率ネット管理システム(図4)を開発する.「政府の感染制御の効率化」と「PAPRを装着しない時・場所を選べる個人の自由」の両立化を目指す.市民のプライバシ保護のため,「データアクセスの検証可能な記録と,監査のための公開」(後述,文献[5]) を適用する. [3.1] PAPR装着率ネットワーク管理サーバ PAPR (ヘルメット型,ブース型) とのネット接続機能を有するサーバを開発する (図4). [3.2] PAPRと組み合わせた実証実験 順次,開発する様々なPAPR試作機について実証実験を行い,信頼性・操作性を向上させる. [4] 社会実験,社会技術システムの提案 2種類の社会技術システムを開発し,社会実験を通して問題点の抽出・改良を行い,「ロックダウンよりもダメージの小さな代替手段・選択肢」として社会に対して提案する.順次,開発するPAPR試作機を社会実験に投入し,PAPR単体としての検証・改良も行う. [4.1] [a]簡易型を用いた即実用化できる社会技術システムの提案,それを用いた社会実験 低コストな[a]簡易型PAPR試作機を用いた,小規模な社会実験 (PAPR10台程度)を通して,即実用化できる「ロックダウン不要の社会技術システム」を提案する. [4.2]ネットワーク管理対応[b]標準型を用いたシステムの提案,それを用いた社会実験 ネットワーク管理システム (図4) を用いた社会実験を行い,「政府による感染制御の効率化」と「装着しない時・場所を選べる個人の自由」を両立させた社会技術システムを提案する.ここでは,「ロックダウン強度」が「要請装着率Wr_requiredの大小」で代替される (図5). 本研究の目的を達成するための準備状況 「PAPRをロックダウン代替手段・感染制御手段として活用する社会技術システム」のコンセプトは,既に,前記の[参考文献-1]で発表しており,学術的な妥当性は認められている.PAPR試作機の開発に必要な技術・経験については,科研費・国際B「低コスト個人用呼吸空気浄化デバイス開発と, フィリピン・セブ市内の病院での運用試験」(R3年度〜R6年度)においてPAPR開発・試験を進めてきており,本研究で取り組むPAPR試作機開発を行う上で十分な技術・経験を有しいてる.装着率ネットワーク管理システムの開発に必要な技術・経験について,プライバシ保護機能付き防犯カメラシステム「e自警ネットワーク」の研究開発を通して,十分な技術・経験を有している.また,社会実験を行う上での必要な市役所,自治会との連携は,「e自警ネットワーク」関連の数多くの社会実験を通して,十分なレベルである.以上,研究グループは,本研究の目的を達成するために十分な準備状況にある. 本研究がどのような国際性を有するか 本研究により,電動ファン付き呼吸用保護具(Powered
Air-Purifying Respirator, PAPR)をロックダウン代替手段 (選択肢)・感染制御手段 (選択肢) として活用した社会技術システムの構築可能性が示されることは,以下の意味を持つ. (a)
COVID-19 等の空気感染症が,いつまた,制御不能になり世界をロックダウンに導くか不明な状況下で,「個人の自由を制限し,莫大な社会的損失をもたらすロックダウン」に対して,選択肢として「より小さな負担の代替手段」を提供する可能性が示される. (b)
他に類例のない社会技術システムの研究開発では,多くの未知の問題に遭遇できる.それらを解決する過程で生み出される新技術の発明・特許は,この社会技術システムが実用化された暁には,世界中で実施されることが期待できる. 本研究は,世界全体に対して,極めて大きな影響を与えるうることが期待される. 【代表的な研究論文・特許】* [1] Y. Fujii*, “An Engineering Alternative to Lockdown During COVID-19
and Other Airborne Infectious Disease Pandemics: Feasibility Study”, JMIR
Biomedical Engineering, Vol.9,
e54666, 2024. https://biomedeng.jmir.org/2024/1/e54666/PDF [2] Y. Fujii*, “Examination of the requirements for powered
air-purifying respirator (PAPR) utilization as an alternative to lockdown”, Scientific
Reports, Vol.15, 1217, 2025. (Published: 7 Jan. 2025) https://www.nature.com/articles/s41598-024-82348-0 [3] 特許第7515044号,マスク装着状況・他者との接触状況の管理方法,管理システム,発明者:藤井雄作,橋本誠司,田北啓洋,登録日:2024年7月4日. https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7515044/15/ja [4] E.
Carcasona, R. M. Galindo, A. Takita, E. Magalang, T. S. Galindo, S.
Hashimoto, T. Yamaguchi, E. U. Tibay, D. W. Shu, H. Kobayashi, K.
Amagai, N. Ohta, N. Yoshiura, A. Kuwana, A. Yano and Y. Fujii*,
“Very-Low-Cost Powered Air-Purifying Respirator (PAPR) “Distancing-Free Mask
Industry (DFM-I) Prototype No.1” and Proposal for a Lockdown-Free Industry”, Journal
of Technology and Social Science, Vol.6, No.2, pp.1-4, 2022. http://jtss.e-jikei.org/issue/archives/v06n02/JTSS_v06n02a001.pdf [5] R. M.
Galindo, A. Takita, E. Carcasona, E. Magalang, T. S. Galindo, S.
Hashimoto, T. Yamaguchi, E. U. Tibay, D. W. Shu, H. Kobayashi, K.
Amagai, N. Ohta, N. Yoshiura, A. Kuwana, A. Yano and Y. Fujii*,
“Low-Cost Powered Air-Purifying Respirator (PAPR) “Distancing-Free Mask
Frontline (DFM-F) Prototype No.1” for the Operational Tests in Hospitals in
Cebu City, Philippines”, Journal of Mechanical and Electrical
Intelligent System, Vol.5, No.2, pp.1-6, 2022. https://jmeis.e-jikei.org/ARCHIVES/v05n02/JMEIS_v05n02a001.pdf [6] Y.
Fujii* and N. Yoshiura, “Will every streetlight have network
cameras in the near future?”, SCIENCE, eLetters (21 October
2016). http://science.sciencemag.org/content/347/6221/504/tab-e-letters |